法人と個人の違いⅤ 社会保険・役員登記・社会的信用度ほか

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今回がこのテーマの最終です。
前回までについては、こちら。
法人と個人の違いⅠ 設立・開業方法
法人と個人の違いⅡ 役員報酬・家族への給与 法人化=節税になる?
法人と個人の違いⅢ 赤字の繰り越し(青色申告の場合)・税率・交際費
法人と個人の違いⅣ 赤字の場合の税負担・決算申告の難易度・決算期ほか

■社会保険加入

個人の場合は、従業員が5人未満であれば、社会保険の加入義務は基本的にありません。
(雇用保険と労災保険は入らないといけません。)
法人の場合は従業員の数に関係なく強制加入で、社長自身も加入することになります。
社会保険は、法人と従業員で費用は折半なので、当然法人の費用負担も増加します。
ただ、将来的な給付のことを考えると、メリットともデメリットとも言えるかと思います。

■役員の変更が必要

どういうことかというと・・・
通常は定時株主総会により役員の任期が完了し、2週間以内に変更登記が必要となります。
その役員の任期は、以前は2年以内だったのですが、平成18年5月以降、10年以内に延長されました。
つまり、変更登記も10年に1度でよくなりましたが、個人の場合は必要ない手続きが、法人の場合必要となります。
ただ、10年になったことで、費用負担は少なくなりますし、事務負担は減ったということにはなります。

「10年にした場合のデメリットもある?」
まず、長くなったことで変更登記を忘れやすくなる、ということがあるので注意が必要です。
あと10年になったということは、10年間やめさせることができないということですので、役員の中に他人がいる場合は、2年をお勧めすることも多いです。

■社会的な信用度・融資

法人の方が社会的な信用度が高い、ということはよく言われます。
取引先にとっても法人の方がメリットとなるケースも多いです。
法人相手でないと取引できない、というケースも、今も大企業との取引などの場合によくあります。
そういう意味あいで、事業拡大につなげるために法人をお勧めすることも多いです。

また、それに関連して、法人の方が融資を受けやすい、ともよく言われます。
ただこれに関してはケースバイケースかと思われます。
一般的には、法人の場合は登記簿謄本で概要を確認できたり、経理処理が比較的厳しいため、金融機関から見て安心ということはあるかもしれませんが、個人でも融資を受けるのはもちろん可能ですし、法人になったからといって必ず受けられるとは限りません。ですので一概には言えません。

これまで、法人と個人の違いについて、何回かに分けてお話してきました。

で、結局、法人と個人どっちがいいのか、という話になりますね。よくそのようにご相談を受けます。
個人事業で開始しして消費税の課税事業者となりそうな段階で法人化し、2年間の免税を受ける、というケースはよくあります。
それも節税となりますからもちろん1つの方法です。

また、所得がいくらいくらを超えれば、とかもよく言われますが、それに関しては一概には言えません。
役員報酬をいくらにするかということも関連しますし、本当にケースバイケースです。一律的な基準というのはありません。

いつも申し上げるのは、節税だけで判断すべきではなくて、総合的な判断が必要ということ。

以前の給与所得控除のところでも話したように、例えば現段階では節税の効果が見込めるとしても、先の税制改正によりどうなるかはわかりません。
また、住民税の均等割のように、法人には「必ず発生する税負担」というものがあります。
先程の項目の社会保険負担のように、税金以外で増加する負担もあります。

逆に、やはり社会的信用度のアップのためや、事業を拡大するためには、法人化するメリットが非常に大きいという場合には、節税にならなくても、費用負担が増えても法人にするというケースは多々あります。
ある程度の規模で事業を行われる場合は、法人をお勧めすることも多くあります。
目的によりそれぞれメリットデメリットが存在します。

つまり、経営者ご自身のビジョンや考え方により、本当にケースバイケースです。専門家にご相談するのも一つの方法です。

シリーズによりお伝えしてまいりました。

5回と長くなりましたが、これら一連のお話が、これを読んでくださった方々にとって少しでもご検討の材料になりましたら幸いです。

次回から別のお話に入ります。

関係ありませんが、↓は今週、仕事の合間に立ち寄った箕面のお寺。
紅葉はもう終わりかけでしたが、それもまたしっとりした風情があり癒されました。
紅葉が終わると繁忙期真っ盛り。
駆け抜けてまいります。