法人と個人の違いⅡ 役員報酬・家族への給与 法人化=節税になる?

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起業に関するお話として、また最近よくお受けするご質問でもありますことから、「法人と個人の違いについて」というテーマで何回かに分けてお伝えしております。

初回である前回は、設立・開業方法についてのお話をさせていただきました。

法人と個人の違いⅠ 設立・開業方法

HPをリニューアルしてからほぼ月に1件のペースでお客様とのご縁を頂いており、特にここ最近で連続して法人化のお手伝いをさせていただいております。
ありがたいことと感謝しております。

そのことに因みましてこのシリーズでお伝えしております。

今回はこのテーマで。

■役員報酬・家族への給与

(1)経営者自身について

個人の場合は、経営者が自分自身に給料を支払う、ということはありません。
具体的には、事業主貸、事業主借、といった事業主勘定という科目で計上し、それは経費にはなりません。
事業主勘定というのは経費科目ではありません。

法人の場合は経営者が自分自身に役員報酬を支払って、それが経費となります。
さらにそこから、給与所得控除というみなし経費を差し引くことができますので、一般的には節税につながると言われます。

ただ給与所得控除については、これまで改正(引き下げ)がなされてきており、今後もさらに見直される可能性もあります。
給与所得控除の上限の引き下げについては、平成28年、29年と段階的に行われてきているのですが、それとはちがうもっと抜本的な見直しも検討されているという話も耳にしています。
過去に、平成18年度改正により、給与所得控除を法人税の方で制限する(特殊支配同族会社の損金不算入)という制度が創設されたのですが、平成22年度改正によりその制度はなくなり、世の中でも安心されていました。すると次はそれに変わって今度は所得税の方から給与所得控除を制限しようという制度が創設される方向になっていきました。
法人化による節税が難しくなる制度が次々につくられていくと感じられますが、最初のその法人税での制度の創設はきっと課税当局側では悲願だったのだと思いますので、それがなくなってしまったことがきっと無念だったのだろうと思われます。
そこで次は所得税側で縛りがかかるとなると、場合によってはあまり節税にはつながらなくなるということもあり得ますし、私たちも、法人化=節税とは一概には説明はしづらくなったと言えます。

しかしその一方で、法人税率の引き下げも行われています。現在では資本金1億円以下の中小企業では最高でも23.4%(平成30年には23.2%に改正)、最低で15%程度の法人税率となっています。そういった意味では法人化による節税が見込めるケースもあります。
しかし、次回以降でお話しする予定の社会保険料負担の増加や、税理士報酬の増加などといった検討事項もありますので、やはり節税のみを目的とした法人化はお勧めできないと言わざるを得ません。
その反面、もちろん法人化にはたくさんのメリットもあり、また次回以降お話しします。
話が少しそれましたね。
いずれにせよ、このあたりの改正については今後も注目していかなければならないことと考えます。

(2)生計を一とする家族について

個人の場合は生計を一とする親族に給与を支払ってそれを経費にするためには、青色申告にして専従者とするなど一定の手続きが必要、しかも制限ありです。いろいろな要件もあります。

法人の場合は、家族を役員とすることも、従業員として普通に給与を支払うことも可能です。
つまりそうすることで法人の所得を分散して、節税につなげることも可能になります。

「じゃあ、奥様に月100万の給与を支払ってもいいの?」
やはり業務内容に見合った金額でないと、税務署に指摘される可能性はあります。
決算書類の一つに勘定科目内訳書というものがありますが、その内訳書の役員報酬のページに、常勤非常勤を書くところがありますので、それで例えば非常勤で月100万となると、あれ?となると思われます。

もう一つ注意することは、役員報酬の場合は、原則として年の途中で変更できない、ということです。
普通の給与ならもちろん変更できるのですが、役員報酬に関しては、例えば年の途中で利益が予想以上に上がっても、節税のために年度途中で役員報酬をアップする、といったことはできません。
もしアップして支払ったとしても、原則、その分が損金にできなくなってしまいます。
役員報酬の改定は事業年度の開始から3カ月以内にしないといけません。1年の間でそのタイミングのみになるので、その点は注意が必要です。

役員報酬や給与のお話でした。

次回に続きます。