扶養になるかならないか 配偶者控除や扶養控除の要件で出てくる「合計所得金額」とは?

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家族を扶養にできるのかどうかで、所得控除が変わってきます。
したがって税額も変わってきます。

その、扶養にできるかどうかの判断で重要な概念となるのが「合計所得金額」です。
ですがこの「合計所得金額」の意味、実際はあいまいに理解されているケースが多いように感じます。

1.扶養(又は控除対象配偶者)になるための要件

配偶者を扶養している場合には配偶者控除が、配偶者以外の家族を扶養している場合には扶養控除が受けられます。
(16歳未満の扶養親族は現在の法制度では扶養控除の適用は受けられません。)
その配偶者控除や扶養控除の要件に、「その家族の合計所得金額が38万円以下であること」があります。

他にも勤労学生控除や住宅ローン控除の要件でこの合計所得金額が用いられます。

今日はその「合計所得金額」について。

2.合計所得金額とは

合計所得金額は収入金額ではありません。
まず基本は、確定申告書Bの⑨の金額、つまり①から⑧の合計額です。
確定申告書Aの場合は⑤の金額です。

簡単に言いますと、事業所得でしたら収入から必要経費等を差し引いた金額、給与所得でしたら給与収入額から給与所得控除額を差し引いた金額です。それらの各所得の合計額が、⑨なり⑤なりの金額です。

ただし、「合計所得金額」は、上記の⑤や⑨の金額とイコールではないケースがあります。

3.⑤又は⑨の金額と合計所得金額がイコールではないケース(分離課税)

「合計所得金額」は、確定申告書Aの⑤の金額、確定申告書Bの⑨の金額、と述べましたが、それとイコールではないケースがあります。

それは、分離課税の所得(退職所得、山林所得、譲渡所得等)がある場合です。

これらの所得の詳細はここでは割愛します。

これらの分離課税の所得は確定申告書の第3表というところで計算されるため、確定申告書Aの⑤の金額、確定申告書Bの⑨の金額に、これらの所得は反映されません。
これらの所得がある場合には、⑤又は⑨の金額にその所得金額を足し上げて、38万円以下かどうか判定する必要がある、ということです。

4.不動産の譲渡所得の場合

不動産の譲渡所得で分離課税のものも、上記にの理由よりその所得金額を合計所得金額に足し上げる必要がありますが、ここで注意。
その足し上げる譲渡所得の金額は、特別控除前の金額になります。

例えば、以前ブログでお話ししました、マイホームを売却した場合の譲渡所得の3,000万円控除の特例を適用し譲渡所得がゼロとなった場合でも、その特例を適用する前の譲渡所得をもとに合計所得金額を出す必要があります。
つまり、合計所得金額の計算の際には、特例を適用する前の譲渡所得を足し上げるということです。

特例適用により譲渡所得は発生しなかったから扶養に入れる、と思いきや、そうではないということです。

尚、
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
等の損失の繰越控除を受けている場合についても、その繰越控除をする前の金額となります。

5.株式の売買や配当の場合

この場合はまた少し複雑にはなりますが、簡単に言えば、申告していない所得は含めなくてよい、ということです。

株式の配当で確定申告をしない(確定申告不要制度を適用する)場合や、特定口座で源泉徴収あり(確定申告不要)を選んだ場合は、その所得金額を合計所得金額に足し上げる必要はありません。

逆に、配当所得で総合課税を選んだ場合や、株式の譲渡で損益通算目的で確定申告に含めた場合は、それらの所得を合計所得金額に含める必要がある、ということです。

さらに、株式の譲渡所得を申告するとした場合は、前年以前の損失を繰越控除している場合はその控除前の所得を適用しなければなりません。

6.その他

その他のポイントについて少し。
・源泉分離課税の適用となる所得は基本的に含みません。
・非課税となる所得は含みません。(遺族年金、失業保険等)
・損益通算の適用がある場合は損益通算後の金額となります。

7.総所得金額等との違い

総所得金額等とは、医療費控除や寄付金控除、雑損控除の要件で使われるものです。
合計所得金額と混同されることもよくありますが、違いがあります。
少しだけ触れておきます。

基本的には合計所得金額とほとんどは同じです。損益通算後の金額であることも合計所得金額と同様です。
違いは、5.と6.でで触れました繰越控除です。
合計所得金額は、損失の繰越控除の適用前の金額ですが、総所得金額は繰越控除をした後の金額となります。

※合計所得金額についてポイント

・所得≠収入
・分離課税がある場合は原則それらの金額を含む
譲渡所得の特例等を適用した場合はその適用前の金額
損失の繰越控除を適用した場合もその適用前の金額
・分離課税がない場合は基本的に「確定申告書Aの⑤又はBの⑨=合計所得金額」と考えてよい

ということになります。

写真は先週末の同級生女子の飲み会。
3人とも忙しい時期なので癒しのひとときとなりました。
これはメガジョッキ。1杯あたり、大瓶1.5本分だそうです笑。