市販薬限定の新しい医療費控除「セルフメディケーション税制」2017年からスタート

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2017年から薬局で大きな変化が起きています。
「セルフメディケーション税制」が2017年からスタートしました。
医療費控除の特例、いわば市販薬に限定した医療費控除です。

1.セルフメディケーション税制とは

病気の予防や健康維持に積極的な取り組みを行っている方が、対象となる医薬品「スイッチOTC医薬品」(後述)を購入した場合に、適用を受けられる制度です。
年々増え続ける国の医療費負担を減らすために創設された、とされています。

従来の医療費控除でも市販薬も対象とはなりますが、医療費合計額のラインが下がったことに意味があります。

今回の新医療費控除は、対象となる市販医薬品の購入額の合計が1万2千円を超えれば適用を受けられます。

2.スイッチOTC医薬品とは

医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)からドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品、とされています。
処方薬は該当しません。
かといって市販薬のすべてというわけではなく、厚生労働省の指定を受けたものに限られます。
医薬品の包装や値札などにこのような「税 控除対象」マークが貼られているものもありますが、まだマークは推奨段階で義務ではないため表示していないところも多いようです。

具体的な品目一覧は、厚生労働省ホームページに「対象品目一覧」として掲載されています。

3.適用を受ける要件

申告する人がその年に、
(1)人間ドッグや各種がん検診等(健保組合や市町村等が実施)
(2)生活保護受給者等を対象とする健康診査(市町村が実施)
(3)勤務先等で行われる定期健康診断
(4)特定健康診査(メタボ健診)や特定保健指導
(5)インフルエンザなどの予防接種

などのうち、いずれか一つを受けていることです。

これらの取り組みを行っている証明としてこれらの領収書又は結果通知書等が必要となるのですが、これらの費用は対象とはなりません。

4.従来の医療費控除との選択適用になります

両方は受けられません。どちらか一方を選択して適用を受けることになります。

また選択適用した後は、更正の請求等で変更することもできません。

対象となる医薬品が異なることと足切りラインが異なることから、いずれが有利かの判定が必要となります。
・従来の医療費控除の対象となる医療費の総額-10万円
・セルフメディケーション税制の対象となる市販薬購入費の総額-1万2千円
のいずれが大きいか、ということになりますね

5.ただし共働き夫婦等、両方に所得があればそれぞれが別の制度を使うことも可能?

厚生労働省のセルフメディケーション税制に関する Q&Aより

Q5 同一世帯の中に、従来の医療費控除により申告する人と、この税制により申告する人がいて構いませんか。

それぞれが所得控除を申告することができます。

と説明がされています。

例えば夫が従来からの医療費控除を、妻がセルフメディケーション税制を、それぞれで利用することも可、ということですね。

ただし、夫婦で分けた方がお得になるかどうか、というとそうとも言えません。
スイッチOTC医薬品は原則、従来の医療費控除の対象となる医薬品にも該当しますので、結局は今までと同様、1人にまとめた方がお得となるケースが多いでしょう。
そういう意味では、基本、分ける必要はないと考えた方がいいかと存じます。

いずれにしましても、これからは市販薬のレシートも捨てずにとっておくようにしましょう。

まだ新しい制度ですので行き届いていない面も多いように見受けられます。全ての対象品へのマークの表示など、様々な対応が望まれますね。
さらに言えば、予防や健康維持に積極的な人が対象であれば、予防接種や健康診断の費用も対象としてほしいものです。

国税庁ホームページ【セルフメディケーション税制】

次回は医療費控除の添付書類の改正についてのお話をいたします。