法人と個人の違いⅣ 赤字の場合の税負担・決算申告の難易度・決算期ほか

シェアする

前回からの続きです。
法人と個人の違い。このところずっと色々な方との話題に上っているテーマです。
前回までについては、こちら。
法人と個人の違いⅠ 設立・開業方法
法人と個人の違いⅡ 役員報酬・家族への給与 法人化=節税になる?
法人と個人の違いⅢ 赤字の繰り越し(青色申告の場合)・税率・交際費

年末調整の時期となり、業界は繁忙期に突入しています。
そんな中、ご縁に感謝したり、これまでの繋がりに感謝したり、近くでいつも支えてくれる力に感謝したり。

人は人とのつながりの中で生きている、と実感する日々を、公私ともに充実した毎日を過ごしております。

このまま笑顔で走り抜けてまいります!

本題に戻りましょう笑。
法人と個人の違い、今回のテーマはこちらです。

■法人は赤字でも税負担が発生する

個人の所得税の場合は、赤字なら事業所得は発生しませんので、他に何もなければ税負担はなくなりますが、法人の場合は住民税の均等割という、赤字であっても定額で発生してくる税金があります。
地方にもよりますが、7万円とか8万円といった金額がかかります。
これは頭に入れておかないといけません。

決算申告の難易度

個人事業の所得税の場合は、税理士さんに頼むケースももちろん多いですが、自分で確定申告する方も多くいらっしゃいます。
比較的、ご自分でも何とか処理できるレベルかと思います。個人では3月15日までに確定申告することになります。
法人税となると、けた違いに大変になります。
提出する書類や添付資料の量も増え、科目内訳書や概況書といった、個人の場合にはない書類の作成提出も必要となります。
また申告自体も経営者様がご自分で行うには難解となります。
住民税や事業税といった地方税の申告も必要です。
個人の所得税の場合は、所得税の申告書を出せば住民税の方へも自動的に回りますが、法人税の場合は別に住民税と事業税の申告が必要になります。
なので、法人の場合は通常は税理士に頼むことになるケースが多くなり、そのための顧問料も必要となります。

法人は決算期を自由に決められる

個人の場合は決算期は12月と一律ですが、法人の場合は決算期を自由に決めることができるというメリットがあります。
法人の確定申告は、原則として決算月の翌々月になります。

では、決算期をいつにするのがいいのか?
これについてはいろいろな考え方がありますが、そのうちのいくつか主なものを。

1.消費税の免税期間をフルに取れる月を決算期にする

つまり、設立の日の前月末日を決算期にとれば、初年度が1年間になりますので、免税期間を2年間フルに取れます。設立初年度が1年未満になるとそれだけ消費税の免税期間が減ります。

ただし、ここで注意するのが「特定期間」というものです。
特定期間とは、簡単にいうと前年の上半期6か月です。法人設立後2期間は原則、消費税の免税事業者となりますので、課税事業者となるとしても通常は3期目以降となりますが、この特定期間の課税売上高が1000万円を超えると課税事業者となります。課税売上高に代えて給与等支払額でも判定できるので、その両方が1000万円を超えた場合、ということになります。

ただし前事業年度が7ヵ月以下の場合は「短期事業年度」となり、特定期間とはならなくなります。
特定期間が存在しなくなるのではなく特定期間の判定が前々事業年度に移行するのですが、新規設立法人の場合は前々事業年度は存在しないため、特定期間での判定は必要なくなる、ということです。
そのため、このようなケースに該当する場合(つまり設立初年度上半期で課税売上高と給与等支払額が1000万円を超えそうな場合)は、初年度は7か月以下にした方がよい、ということになります。

他にも細かい要件等ありますので、詳細は専門家にご相談ください。

2.暇な時期に決算期を持ってくる

売り上げの多く出る月を決算期にすると、事前の決算対策がやりにくくなるケースが多くなります。
売り上げが平均的に落ち着いて、売り上げがある程度読める時期に決算期を持ってきた方が、節税の対策も効果的になります。

3.主要取引先と決算期を合わせる

取引先が決まっているようでしたら、そことそろえた方が、売掛と買掛のチェックがお互いにしやすくなりますので、決算がやりやすくなります。

個人から法人化の場合は、個人時代の延長で、安易に12月にすることもよくあります。
それはそれで悪いわけではないのですが、せっかく決算期を自由に決められるのです。
例えば消費税の課税事業者となりそうなタイミングで法人化する場合で、12月決算とはしない場合は、間に数カ月、消費税の課税事業者の期間が入ることもあるかもしれませんが、やはり12月と安易に決めるより、上記で申し上げたような観点から決算期を検討されるのがよろしいかと存じます。

■税務調査が増える?

法人となると税務調査が増える、とよく言われますが、これに関しては一概には言えません。
個人だから調査がないとか安心といったことは決して言えません。
また、一度も税務調査を受けたことのない法人もあります。
ただ、これは世の中ではよく言われることではあります。

次回に続きます。