融資について 起業時に注意することⅢ

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前々回、前回の続きで、法人設立の登記の際に気をつけないと後に融資を受けられなくなるかもしれない、というお話の3回目です。

■本店所在地

事業規模が小さい場合は、設立するとき、やはり自宅を本店所在地とする場合が多いかと思います。
また個人からの法人化の場合は、事務所があればそこを本店とするでしょう。

しかし、例えば事業の場所としてはほとんど大阪市内なのに、とりあえず自分の地元の兵庫県で起業した、とします。でも事業が軌道に乗ってやはり地元では不便なために大阪市内に移転した。そして資金調達の必要が生じて、大阪の制度融資を受けようと保証協会に相談したけども、大阪での実績がないため断られた。兵庫県で相談して下さい、と。兵庫県に相談しても、今は大阪だから大阪で相談して下さい、と。八方ふさがり、ということにもなりかねません。

本店を決める際にも、そういったことを検討しておくにこしたことはないでしょう。
自宅を本店とするケースというのは、あかんかったらここに戻ればいいという考えなのであれば、それはその時点でアウト、でしょう。
本店所在地を自宅とすることで、その自宅を起点として事業をのばし広げていく、というケースならいいのですが、いずれにしても最初に決める本店所在地は、もともと事業を展開する場所、それが自宅なら自宅でいいですが、そうではないならその事業の実態のあるところで届出する必要があると考えます。

ちょっとおまけの話ですが、
例えば、自社の業績が悪化して融資を受けることができないからと別法人を作った場合です。
そうやって別法人を設立したとしても、代表者が同じであれば、原則として別法人でも融資を受けることは難しいです。
であれば、代表者を別にすれば問題ない、と思われるかもしれませんが、そんなに簡単ではありません。
もし元の自社と同じ住所で登記したら、金融機関は、あれ?と思うでしょう。確かに社長が違うけど・・・?と疑問に思い、新会社の代表者についてみてみると、元の会社の社員だった・・・というと、疑いの目で見られることになります。
それどころか、かえって印象を悪くするでしょう。全くの他人を代表者にしたとしても、取引の内容や何らかの手がかりから怪しまれる可能性は少なくないと思います。
融資を目的にした別会社設立は、金融機関には通用しないと思っておいた方がいいでしょう。
もちろん、別会社設立自体がダメなのではなくて、それ以外の目的があったりいろいろ確認検討したうえであれば別です。融資を受けたいだけのための別会社設立は、やはりお勧めはできません。
余談ではありますが、設立の際に、こういったリスクもある、ということを頭に入れておくとおかないで違ってくることも場合によってはあるかと思いご紹介させていただきました。

■会社設立年月日(決算月)

決算月を自由に決められるというのは法人のメリットですが、ここでも注意点があります。
たとえば、創業2年未満を要件としている創業融資だった場合です。
例えば2月に会社設立して3月決算にしたとします。
第1期は2カ月、第2期は12カ月ということになります。で、第2期が終わった4月に創業融資を検討したとします。2年未満というのは24カ月未満と考えて、大丈夫、と考えたのですが、2年というのは、2期という意味だった、つまり2期目の決算を終えてしまっているので、もう対象外、と断られる可能性も、ゼロではないでしょう。
実際には対応してくれるケースもありますが、厳密にいえば対象にならないでしょう。

逆のケースもあります。
2期の決算を終えていること、が要件の場合、上記のケースだと、2期の決算を終えているので大丈夫だろう(それを目的として、わざわざ1期目が少なくなるように設立した)、ということで申し込んだら、こんどは「第1期が2カ月しかないので対象となりません、3期目の決算を終えてから申し込んでください」と断られる・・・こういう可能性もあります。

難しいのですが、これは金融機関によっても異なりますので、最終的にはその銀行がどう判断するかです。事前に確認できることは確認しておく、ということも必要になってきます。
以前このブログでお話したように、決算月を決めるときは、消費税の免税期間をフルに活用できるように、等の視点もありますが、融資を検討する可能性がある場合は、今お話したような視点もちょっと頭に入れて置いていただけたらと思います。

■法人の形態

会社の形態には、株式会社、合同会社、社団法人、NPO法人等があります。この形態にも留意する必要があります。
例えば、社会性のある事業であるためNPO法人を設立したものの、融資を検討した際、NPO法人は信用保証の対象になっていないため銀行に対応してもらえなかった、というケースもあります。
なお、「日本政策金融公庫」はNPOを対象としていますので、積極的に相談に乗ってくれると思います。
公庫は、政策的にソーシャルビジネス/NPO向けの融資残高を増やしている、ということですので、門前払いされるようなことはないでしょう。
ただし、信用保証協会については、“原則として”、NPO法人は対象としていません。(例外規定はあります。)
各信用保証協会によって違いますので、確認が重要です。

次回に続きます。

写真は、先日ついつい買ってしまったCD😅
3枚組、非常に聴きごたえがあります😊